1978年創業 コンプレッサー専門
コンプレッサーの修理・点検・販売
設置工事は"羽コン"にお任せください。

お問い合わせはこちら
お問い合わせ キャンペーンECサイト

columnコラム

コンプレッサーのグリスアップとは?効果的な方法とメンテナンスの重要ポイントを徹底解説

コンプレッサーは製造現場をはじめとして、様々な産業分野において重要な役割を果たしています。エアツールの駆動、包装機械の稼働、成型機器のエネルギー供給など、その活躍の場は多岐にわたります。空気を圧縮し、それを利用可能なエネルギーとして送り出すこの装置は、日々の稼働を通じて目に見えないほどの負荷をその構造体に蓄積しています。そうした中で、定期的なメンテナンスの一環として行われる「グリスアップ」は、コンプレッサーの健全な運転と長寿命化のために欠かせない要素です。

グリスアップは単なる潤滑作業と捉えられがちですが、実際には、機械構造の摩擦軽減、部品の保護、振動の緩和、温度上昇の抑制など、複数の機能的意義を持っています。グリスの不足や劣化は、わずかな違和感として始まり、やがては重大な故障や予期せぬ停止を引き起こしかねません。この記事では、そうしたリスクを未然に防ぐために、グリスアップの基本から応用までを丁寧に解説していきます。

摩擦軽減と寿命延長に寄与するグリスの働き

回転運動を基本とするコンプレッサーの構造では、ベアリング、ギア、シャフト、軸受といった可動部品同士が高頻度かつ高速で接触し合います。こうした状況で最も恐れられるのが「ドライ運転」と呼ばれる潤滑不足の状態です。潤滑が不十分な状態が続くと、金属表面が直接こすれ合い、発熱や摩耗を誘発し、部品の変形や焼き付きといった深刻なダメージにつながります。

その点、グリスは潤滑油に比べて粘度が高く、部品にしっかりと付着して安定した潤滑膜を形成します。これにより潤滑性能の持続性が向上し、さらに水分や粉塵の侵入を防ぐシール効果も果たします。特に屋外設置のコンプレッサーや、湿気や粉塵の多い環境下では、グリスの選定と適切なグリスアップが一層重要になります。

グリスアップを怠った場合に発生するリスク

グリスアップを怠った場合、初期段階ではわずかな音の違いや振動の増加といった、気付きにくい兆候として現れることが多いです。多くの場合、それは作業員の五感に頼る観察によってしか把握できず、定量的な判断が困難なため、見落とされがちです。

しかしながら、それが放置されると、軸受が過熱し、回転の不均衡が生じ、最終的にはベアリングが焼き付き、シャフトの損傷、果てはコンプレッサー全体の停止という重大事故へと発展します。故障が発生すると、修理費用だけでなく、生産ラインの停止による納期遅延、品質管理の乱れ、顧客信用の低下など、企業全体にとって多大な損失を生むリスクをはらんでいます。

グリスの種類と選定時の注意点

市場には多種多様なグリスが存在し、それぞれに粘度、温度耐性、耐水性、化学的安定性といった特性があります。コンプレッサーの用途や設置環境に応じて、最適なグリスを選定する必要があります。たとえば、寒冷地で使用されるコンプレッサーでは、低温でも硬化せず流動性を保てるグリスが求められますし、逆に高温環境下では、揮発性の低い耐熱型グリスの選択が不可欠です。

さらに、食品・医療業界などでは、グリスに対して無毒性や無臭性、NSF H1などの衛生規格への適合が厳しく求められるケースもあります。そのような業界向けには、食品グレードグリスやシリコングリスなどが選ばれる傾向にあります。グリスは単なる「潤滑剤」ではなく、「設備の特性に応じた機能性素材」として捉える視点が重要です。

適切な注入量とグリスアップの方法

グリスアップは「多ければ良い」というものではありません。過剰なグリスは、軸受の中でかえって摩擦抵抗を増加させ、軸受温度の上昇やグリスの早期劣化を引き起こします。また、余剰グリスが密閉空間にたまることで、パッキンを破損させるケースもあります。

グリスアップの基本は、適量を、適切な圧力で、適切なタイミングで注入することです。手動で行う場合はグリスガンのメンテナンスも重要で、吐出圧が安定しているか、ノズルの詰まりがないかなどを事前に確認することが求められます。近年では、電動式や自動タイマー付きのグリス注入機も登場しており、作業者の経験に頼らず安定した供給が可能になっています。

グリスアップの頻度とタイミング

使用頻度や稼働条件により、グリスアップの周期は大きく異なります。例えば、1日24時間稼働のラインで使用されるコンプレッサーであれば、月に1〜2回のグリスアップが必要になることがあります。一方で、週数回程度の稼働であれば、3か月に一度のメンテナンスでも十分な場合があります。

また、夏場や冬場といった外気温の変化が大きい時期、あるいは湿度が高まる梅雨の季節などは、特に注意が必要です。外部環境の変化は潤滑性に直接影響を及ぼすため、普段よりもこまめな点検が推奨されます。点検の際は、過去の記録と照合し、グリスの状態や注入量のばらつきがないかもチェックしましょう。

清掃とパージによる品質保持

新しいグリスを注入する前には、グリスニップル周辺や注入口の清掃を徹底する必要があります。ここに粉塵や水分が付着したまま作業を行うと、異物が内部に混入し、せっかくのグリスアップの効果が相殺されてしまう恐れがあります。

また、古いグリスが残ったまま新しいものを注入すると、性能が混ざり合って劣化を早めたり、化学反応によって成分が変質したりする可能性もあります。したがって、「パージ」と呼ばれる古いグリスの排出作業を並行して行うのが理想です。特に、グリスが固まりやすい高温環境では、パージ作業を怠ると配管内に硬化物が残ることもあるため、注意が必要です。

作業記録とトラブル対策への活用

作業履歴の記録は、単なる事務処理ではなく、将来的なトラブルを未然に防ぐための「診療記録」のような役割を果たします。過去にどのグリスをどのタイミングで、どの部位に注入したかの履歴があることで、トラブル発生時に原因の特定や対応策の迅速な立案が可能となります。

また、複数の保全担当者がローテーションで作業に当たる現場では、個人の経験や勘に頼るのではなく、明確な記録と共有された情報をもとにした作業が求められます。デジタルツールを活用し、作業履歴のデータベース化を進める企業も増えており、保全作業のDX化が着実に進んでいます。

自動給脂装置の導入とその注意点

グリスアップ作業の自動化は、省人化・作業の平準化といった面で大きなメリットがあります。特に、設備が広範囲に渡る大規模工場などでは、自動給脂装置によって保全作業の負担が大幅に軽減されます。あらかじめ設定された周期と注入量で正確にグリスが供給されるため、人的ミスや忘れによるトラブルの回避に効果的です。

しかし、自動化に頼りきることで現場の観察力が低下するリスクも否定できません。定期的な目視点検や音・振動のチェックなど、アナログな確認作業を並行して行うことが、安定稼働の鍵となります。また、給脂装置自体の作動状況やグリス残量の確認も忘れずに行う必要があります。

グリスアップがもたらす信頼性の向上

地道に見えるグリスアップ作業ですが、これは単なるルーチンではなく、設備の健全性を左右する本質的な業務です。定期的な潤滑管理が実施されている工場では、機械の故障率が明らかに低下し、稼働率も向上しています。部品の寿命が延びることで、保守コストの削減にもつながり、結果として企業全体の収益性向上にも寄与するのです。

グリスアップは、直接目に見える成果が出にくい作業かもしれませんが、裏方として確実に効果を発揮しています。この重要性を現場全体で共有し、技術と習慣として根付かせることが、未来の安定稼働への第一歩となるでしょう。

まとめ

コンプレッサーのグリスアップは、機械の健全な運転と長寿命化のために欠かせないメンテナンス作業です。適切なグリスの選定、正しい注入方法とタイミング、そして作業記録の蓄積によって、故障リスクを大きく減らすことが可能です。また、清掃やパージといった前後処理の徹底、自動化機器の適切な導入も、保全作業を支える重要な要素です。

何より、目立たないながらも地道に続けることで、長期的に大きな成果を生むグリスアップの意義を、現場全体で再認識することが求められます。信頼性の高い設備稼働を目指して、ぜひ一つ一つの作業を丁寧に、確実に実行していきましょう。

記事一覧に戻る